社会適応反応について

ボルビィは、「特定の人に対して接近維持しようとする愛情の絆」を『愛着』と呼び発達段階の存在を明らかにしたが、ここでは、愛着関係が形成されているかどうかを測定する古典的な方法『ストレンジ・シチュエーション法』(Ainsworth et al.,1978) があるが、乳幼児だけでなく青年期以降の発達においても重要であると考えられている。他者は自分の要求に対してどの程度応じてくれるかといった主観的確信『内的ワーキング・モデル』が形成される。母子再会や母子分離の様子をもとに、愛着のタイプを4タイプに分けて明らかにすることができる。
『①安定型』 親と別れるときは、悲しみを表し、親が戻ると嬉しそうに抱きつくなどスムーズに再会する。
『②アンビバレント型』 親と離れる時は悲しみを表すが、戻って来た時には怒ったり、不快感を表したりする。
『③回遊型』 親と離れても悲しみを表現しない、また、親が注意を向けても無視したりする。
『④無秩序・無方向型』 行動が組織化されず、何をしたいのか、何処へ行きたいのか分からない。
安定型の場合、自分はたいていの人から好かれるというような表象を持ちやすい。これに対して回避型は、たいていは拒否されるだろうといった表象を持ちやすい。母親のみ、父親のみ、両親と良好、両親とも不安定の4タイプで、両親との関係が安定していると社会的な反応が良好で情動の葛藤が少ないが、その逆で、両親との関係が不安定だと社会的な反応が低く情動の葛藤が高くなるということだ。子どもの欲求やサインを受け取り、応答的に関わる養育態度が必要だと言われている。
また、エリクソン(1963)は、人間の発達を、死を迎えるまで続く過程であると考え、生涯をライフサイクルと提唱して、8つの発達段階に分けた。エリクソンが特に重視した心理的危機は、思春期、青年期に直面するアイデンティティである。
マーシャ(1966)は、アイデンティティの発達状態について「危機に直面したか」と「積極的関与をしたか」の2点から、4つのアイデンティティ地位があると考えた。アイ『デンティティの拡散』(危機の有無にかかわらず、積極的関与ができない)、『早期完了』(危機を経験しているが、関与できない)、『モラトリアム』(危機の最中にあり、関与しようとしている)、『アイデンティティの達成』(危機を経験し、積極的に関与している)である。参考文献 渡辺弥生「発達心理学概論2009」
現代の日本では『モラトリアム』が圧倒的に多いという。親から離れそうで離れない、自立しそうでしない、結婚しそうでしないという様な状態である。数十年前から比べると、社会的に「成人になる」という意味で精神的熟成は更に10年の遅れが見られるという。要するに、昔の二十歳での精神年齢が、現代では30歳になってやっとということだ。これには、社会的、経済的な問題や養育的問題などの様々な要因があるのだと思うが、そうなると青年期でアイデンティティが達成されても、まだなお不安定になる可能性があるという問題が指摘されているのも納得いく。